京都の出版社の編集室と営業部からお届けします。
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キューバ史研究
 2011年2月28日付京都新聞朝刊の文化欄に、神代修著『キューバ史の研究ー先住民社会から社会主義社会まで』が紹介されました。


キューバ史研究
先住民社会から社会主義社会まで
神代 修 著
A5判 230ページ
定価2,350円(税込)
ISBN978-4-89259-638-4

以下、京都新聞文化欄より抜粋

キューバの歴史まとめる 神代・同大名誉教授が出版

 カリブ海地域の歴史を専門とする同志社大名誉教授神代修さん(84)=写真、木津川市在住=が「キューバ史研究」を出版した。日本ではほとんど知られていないキューバの先住民社会から社会主義革命に至る歴史をまとめている。
 神代さんは元時事通信社記者。1970年、国営のハバナ放送の国際論文コンクールに応募。キューバに招かれたのをきっかけに、「明るく陽気な国民性」にひかれて同国の歴史、文化を研究し始めた。同書は87年以降、雑誌などで発表した文章から最近書き下ろした論文まで計10編を年代順に収録した。特に「アステカやマヤ、インカの文化はよく知られているが、カリブ海周辺の歴史研究はほとんど皆無」として、コロンブスの発見以前、グアナアタベイとシボネイ、タイーノら先住部族の石器や土器、装飾具を通して先住民の文化を詳しく考察した。
 また、現代キューバ社会につながっていく時世紀以降の黒人奴隷制度構造を論及し、19世紀に砂糖生産が世界有数になる原因と過程を解明。さらに1868年の独立戦争から、20世紀半ばの社会主義革命への展開と関係性を論じている。「キューバ革命は、資本主義の矛盾を脱却しようと始まった独立戦争の一つの帰結。革命の全体像を知るためには、黒人奴隷の歴史、その前の先住民史を知ることが重要だ」と強調する。文理閣刊。2730円 (河村亮)
2011.02.28 Monday 14:34
おすすめ本 -
手話コミュニケーションと聴覚障害児教育
 2011年2月の新刊です。

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手話を学ぶ人たちの学習室
全通研学校講義集7
手話コミュニケーションと聴覚障害児教育
手話とノンバーバル・コミュニケーション〈本名信行〉
聴覚障害児教育から考える人権〈若狭妙子〉

四六判並製 117ページ
定価1,100円(税込)
2011年2月刊
ISBN978-4-89259-650-6

ジェスチャーや表情、まなざしなど非言語(ノンバーバル)コミュニケーションの特質や重要性について説明する本名講演と、自らの難聴体験や面接事例をもとに、「難聴・ろうの子どもたちが主体的に生きるために必要なことは何か」を考える若狭講演
2011.02.21 Monday 16:17
新刊情報 -
河音能平著作集4 中世畿内の村落と都市
 2011年2月の新刊です。
月報には、広川禎秀先生、渡辺信一郎先生にご寄稿いただきました。

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河音能平著作集第4巻
中世畿内の村落と都市
河音能平著

A5判上製 300ページ
定価5,250円(税込)
ISBN978-489259-634-6

2011.02.21 Monday 16:07
新刊情報 -
キューバ史研究
京都外国語大学ラテンアメリカ研究所様の所報「いえらっく」20号に、『キューバ史研究ー先住民社会から社会主義まで』の書評を掲載していただきました。
また、神代先生から、ジュンク堂千日前支店様の西洋史のコーナーに、置いていただいているとの便りをいただきました。

キューバ史研究
神代修 著

A5判 230ページ
定価2,350円(税込)
2010年8月刊
ISBN978-4-89259-638-4

『キューバ史研究ー先住民社会から社会主義まで 』

 コスタリカを知らないという人もキューバが力リブ地域最大の島国であり社会主義国であることは知っている。また、チェ・ゲバラの Tシャツを着た若者もよく見かける。だが意外にも日本でキューバの歴史が記された本はない。本書は本邦初のキューバ史である。ただし、網羅的な通史ではなく主要テーマに関する論文集である。著者が書きためてきた7本の論考に3本の書き下ろしを加えた10章構成になっている。
 キューバがスペインによる植民地主配を受けた国であることは周知のことであるが、同島の先住民についてはほとんど知られていない。第1章「キューバの先住民社会 」では、コロンブスの第1次航海 (1492年)で発見されフアナ島と命名されたキューバの先住民社会の実態を分析している。同島に存在したグアヤボ・ブランコ、力一ヨ・レドンド、マヤリ一、スブ・タイーノ、タイーノの5部族についてそれぞれの発展段階を特定しながら概説している。コロンブスが「人間の目がかつて見たこともないほど美しい土地 」と形容した同島には植民地化とともに封建的工ンコミ工ンダ制度が導入された。牧歌的な生活を営んでいた先住民は過酷な強制労働により短期間に絶滅する。この過程を描いたのが第2章「キューバの初期史」である。そして、先住民が絶滅したのち新たな労働力としてアフリカから連れてこられた黒人奴隷について分析しているのが第3章「黒人奴隷出自論 」である。注目すべきは、奴隷制度にではなく黒人奴隷がどこから連れて来られたのかという出自・起源に光を当てている点である。そして、黒人奴隷を世界最高の生産高を誇った砂糖産業の労働力としてのみならず、キューバの多様な民族文化形成の功労者と位置づけている。
 第4章「19世紀力リブ地域の砂糖経済」は、小規模な家父長的奴隷制度のもと牧畜、タバコ、コーヒーおよび砂糖という 4大支柱の一角にすぎなかった砂糖産業が、プランテーション奴隷制に依拠するモノカルチュア経済に移行し、資本主義的産業に発展する過程を跡づけている。また、キューバを資本主義生産様式の確立へと導いた奴隷解放の原因分析という観点、から第 1次独立戦争を分桁したのが第5章「キューバ独立戦争と奴隷解放 」である。独立戦争において砂糖プランターとスペイン政府がとった奴隷解放までの措置を追いながら、その背景として砂糖産業の近代化を位置づけ、奴隷制と資本主義という生産様式の矛盾の露出として独立戦争を性格づけている。
 第6章「ホセ・マルティとキューバ革命党 」では、キューバ革命党を創立し一生を独立運動にささげたホセマルティを「第3世界の思想的先覚者」と位置づけたうえで、キューバ革命党の果たした歴史的今日的意義を分析している。第7章「キューバにおける農業改革と社会主義農業の展開 」では、資本主義段階に達しながらも北米独占資本の支配下に置かれ半植民地構造をもたざるをえなかった革命前の経済構造を分析したうえで、それを打破していった農業革命の社会主義的展開を考察している。第8章「キューバにおける新しい「制度化」への動き」では、1961年の社会主義宣言から10年あまり経過した 1970年代の革命が制度化殴階に移行した時期のキューバの状況を分析している。
 第9章「キューバの民族文化」では、文化・芸術面においてキューバは社会主義リアリズム一辺倒ではなくさまざまな芸術潮流が公認・奨励されている点、その理由をキューバ文化の混合性に求めたうえで、ラテンアメリカ全体の一般的傾向と対比しながら共通項と相違点を浮きぼりにしていく。第10章「植民地都市ハバナの形成」では、世界遺産に登録されている旧市街の主要建造物を紹介しながら、首都ハバナ形成史を概説している。
 歴史学徒として、拙文が本書を手にとってもらうきっかけとなれば嬉しいし、本書を手にした読者が随所で提起されている研究課題に挑戦してくれることを著者とともに祈りたいと思います。(初谷譲次/天理大学)

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2011.02.21 Monday 14:14
おすすめ本 -
大阪都市形成の歴史
 2011年2月の新刊です。

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大阪都市形成の歴史
横山好三著

A5判上製 定価2,415円(税込) 
ISBN978-4-89259-645-2

都市は歴史的産物といわれる。これは都市が生き続けてきたこと、これからも生きていくことをいい換えたものだ。…都市をもう一度見直し、都市の隠れた資源を見つけ出し、さらにはそれを再び豊かな都市に向けて投資する道筋を描くことを試みたのが本書である。(「はじめに」より) 
2011.02.14 Monday 11:41
新刊情報 -
くるま依存社会からの転換を
 2011年2月の新刊です。

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くるま依存社会からの転換を
道路住民運動35年のあゆみと提言【運動の手引き】
道路住民運動全国連絡会 編著

四六判並製 定価2,520円(税込)
ISBN978-4-89259-642-1

高速道路はもういらない! 35年にわたる全国各地の道路公害・高速道路反対住民運動の成果と課題を明らかにし、脱クルマ、公共交通による新しい道路交通政策を提言する。

2011.02.14 Monday 11:32
新刊情報 -
健康で安全に働くための基礎
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『健康で安全に働くための基礎』
ディーセント・ワークの実現のために
細川 汀著
A5判並製 定価1,680円(税込)
ISBN978-4-89259-623-0

『医学史研究』No.93号に、上野陽里氏による本書の書評が掲載されました。

 副題に〔ディーセント・ワークの実現のために〕が付いている。この英語の的確な日本語はないらしい。これは、近ごろの文化人たちがやたらに日本語を英語に置き換えるのとは、本質的に異なる。彼らは自分の表現力の貧しさを隠すためである。〔ディーセント・ワーク〕の適切な日本語訳がないということ自体が、日本の貧しさを象徴しているともいえる。しかしその意味することは、前文に記されている。労働とはなにかを堅苦しくなく平易に記されているので、高校生にも一般若者にも理解されやすい。表題にある健康とは何か、安全とは何か、についても、哲学的な内容もふくめて理解しやすい。読者に対して親切である。まだ母性保護、育児、学校における労働安全・健康教育も本書に含まれているが、本書の視点の高さや視界の広さをよく示している。
 内容は実に豊富であり、医学的用語である〔振動障害〕〔過労死〕〔ミス〕から〔ストレス〕〔ハラスメント〕にいたるまで、具体的に記述されている。これらの項目は、ともすれば社会科学の領域で論じられる内容である。書評者は職業柄原子力発電所事故に関連して、〔原子力事故〕に関心をはらってきた。今問題になっている高速増殖炉事故に関連して、本書をもう一度読み直してみようと思う。本書では日本語になった〔ミス〕と英語の〔エラー〕の関係については論じていないが、おもに医療の世界でおきている〔ヒヤリハット〕を含めた日本語の〔ミス〕という現象はいまや専門の世界でもさけて通れない。その意味では、読者の対象は若い世代の人ばかりでなく高い専門技術者にも本書は読者を拡大できる。現在〔過労死〕は裁判問題の枠を越えて、医学的命題として科学的メスが入っているが、〔過労死〕が本書の作成を主導した細川氏の発明語であることを、書評者は恥ずかしながら初めて知った。毎日の新聞で〔過労死〕という言葉のない日はないが、この項目を〔コラムQアンドA〕として〔過労死自殺〕が追加されている。若い女性医師が〔過労自殺〕した最近の事件は、同業者である書評者の胸をつく。本来ならば〔過労死〕に立ち向かわねばならないことを自覚している医師ですら、自分が〔過労自殺〕に追い詰められる悲惨な現実が日本にはある。悲しいことだが、これらの項目は増加する一方である。最近書評者は自殺が世相を反映する重要な指標であることを別の論文で述べたが、本書には〔ディーセント・ワーク〕の観点からそれを示している。古くから問題視されている〔白ろう病〕は依然として重要な疾患であり、最近社会的に取り上げられる〔中皮腫〕は病理学的に謎の多い疾患であるが、〔中皮腫〕発病の原因からアスベストを除外することが科学的に不可能になっている。アスベストの社会的利用の拡大によってますます重要な病気である。さらにこれらの障害の理解をたすけるために、平易に書かれた医学的知識の1章が設けられている。この説明が秀逸である。というのは医療や人体生理学に全く縁のない人々に理解してもらえるように配慮がされているからである。〔凍傷〕を〔しもやけ など〕と言い換えて列記してあるのは、そのよい例であろう。
 大分以前のことであるが、〔安全〕について、大学で講座が設けられるほど注目を浴びたことがある。当時の安全論の基本は、心理学に軸足をおいたマニュアル学に近いものであったため、ある程度の改革がなされるとこの分野の学問は消えてしまった。ここで決定的に欠けていたのは、本書で繰り返し指摘していた〔ディーセント・ワーク〕の観点である。そのため、いまだに高速増殖炉事故のように14年振りに再開されると、また基本的な事故が繰り返される現実に遭遇する。しかし交通事故が多いからタクシー全廃とういうような短絡的主張は意味がない。〔ディーセント・ワーク〕が確率していれば、交通事故は最小限に押さえ込めるのである。残念なことであるが、本書に掲げた〔ディーセント・ワークの実現のために〕というスローガンは永遠に続くかもしれない。一見平易な文章で気軽に読める本であるが、内容はよく噛みしめて読まないと、上滑りしてしまう本だと思う。
 最後に読後感を述べる。健康、安全、労働、生活に関して頭にうかぶ事項は、ほとんど本書に記載されている。編者、著者の見識の広さは驚くほどである。詳細の検索は本書から進めばよい。その意味で本書は辞典の役割がある。昔フランス映画(パリ祭りか?)の中で、蓄音機が過剰生産され価格が低下した時に、労働者を解雇して会社の危機を乗り越えるのではなくて、労働者は労働時間を短縮してパリ祭を楽しむ時間の延長するという手段をとったという、いささかユートピア的筋書きを書評者は思い出した。この映画の作者の意図はユートピアでないもっと奥深いものではなかったかと、今改めて思い出している。いずれにしても本書を読んで、誰も現在の社会に絶望するのではなく、かえって明るい生活を建設しようという元気を得たように思う不思議な本である。本書は手元においておきたい本である。
 追記:先日耕運機による農家の死亡事故が放置できない数に増加したことが報道され、政府が調査に乗り出した。これら第一次産業では、主に林業における振動障害があげられるし、本書でも振動障害は重要な疾病として取り上げられているが、耕運機による農家の死亡事故はまだ取り上げられていない。今後の重要項目であろう。
(『医学史研究』No.93号)より
2011.02.07 Monday 15:27
おすすめ本 -
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